「第22回 一般社団法人 日本外傷歯学会・総会・学術大会」開幕、リハビリにフォーカスして歯の損失リスク軽減を目指す

日本外傷歯学会(Japan Association of Dental Traumatology)の「第22回 一般社団法人 日本外傷歯学会・総会・学術大会」が開幕した。「外傷後のリハビリテーション ~オーラルリハビリテーションを再考する~」をテーマに掲げ、8月15日までオンデマンド配信にて実施。大会長は河合毅師(神奈川リハビリテーション病院歯科口腔外科/関内馬車道デンタルオフィス)が務める。

日本外傷歯学会は、日本における外傷歯学会の重要性を考えて1998 年に設立された。歯を失う原因の中でも、高齢で確率の高くなる齲蝕や歯周病ではなく、低年齢から若年層までにも可能性が高い「外傷」にフォーカス。亀裂、破折、脱臼、移植や再植のほか、歯冠修復、生体材料(接着)、画像による歯科放射線、歯槽骨、顎骨に至る歯科口腔外科など外傷歯学の分野において、基礎と臨床の双方の知識と経験や技術を共有し、各分野との橋渡しをすることで、学術的根拠に基づく臨床評価を目指している。2018 年からは日本外傷歯学会から、「一般社団法人日本外傷歯学会」として認定され、スタートを切った。

近年、特にストレスが引き起こす食いしばりなどの噛みしめや歯軋りなど「ブラキシズム」が多くなっているという。過度に強くなると咬合性外傷を起こし、歯周炎の状態に陥り歯槽骨の吸収から歯牙を喪失する可能性が増加。またブラキシズムは空嚥下を繰り返し引き起こすため、舌を歯牙に押し付けることが多くなり舌炎を併発することもあるという。大会長の河合は「舌炎は、ブラキシズムによって部分的に欠けたり尖ったりしてしまうことでリスクが高まるだけでなく悪化する確率も大きくなります。最悪の場合は舌癌の原因にもなるため、しっかりと対策することが大切です」と話す。

また、現在の大まかな割合は不明だが、「ブラキシズムの弊害に関する啓蒙活動が進んでない現状では割合は増えていると思われる」と河合は予測する。「特に昭和世代の35歳以降の人は子供時代に『口を閉じなさい』と言われて育った傾向があり、口を閉じる=歯を食いしばると誤解して強く食いしばる習慣「クレンチング」を起こしている場合が多く見受けられます」。

さらに外傷に関する初期対応などに関しては「一般社団法人 日本学校歯科医会」や「日本歯科医師会」などでも取り上げられ、歯科業界全体に知識が浸透する機会が広く持たれている。しかし、外傷後の口腔内の状態を受傷前の状態と同等レベルに戻すためのオーラルリハビリテーションに関しては、担当歯科医師の裁量権によって決められるため、患者は非常に狭い選択肢の中でインフォームドチョイスを迫られるという問題があった。

第22回目のなる今大会は、これまで以上に適切な診断による外傷の予防や、QOLの維持にフォーカスし、外傷による歯牙喪失後のオーラルリハビリテーションを考えていくことを目的に開催。様々な分野の専門家を講師に招き、外傷に関する基礎的、臨床的な知見をそれぞれの立場から発信する。テーマ選定について「参加者の知識が向上し、実際の診療でも患者に還元できるよう実践的な学会を目指した」と河合は言う。特に、特に補綴分野においては虫歯などの一般歯科から、理想の歯にする審美歯科まで幅広く対応することを考慮し、プログラムにも反映されている。

大会長の河合は、「外傷というのは一般的に対物・対人によって生じると考えられがちですが、嚥下という口腔内の随意・不随意運動からも生じる身近な問題です。さらに舌癌などが生じることもあるということを特に知ってほしいです。一般的に舌癌は喫煙や飲酒などがハイリスクでありその習慣がなければ起こりにくいと思われがちですが、実はそれこそが落とし穴。女優の堀ちえみさんなどが特にそのケースに当てはまるのですが、ブラキスズムにより生じた舌炎や小さな潰瘍に対してレーザー照射をしてししまうなど、初期対応に関してはまだまだ発展途上だと思われます。そういった意味でも、外傷に関してアンテナを高くして初期対応やオーラルリハビリテーションも含めて是非この学会から学んでほしいと思っております」と大会への思いを語った。

■第22回 一般社団法人 日本外傷歯学会・総会・学術大会
テーマ:外傷後のリハビリテーション ~オーラルリハビリテーションを再考する~
会期:2022年7月16日(土)~8月15日(月)
会場:WEB(オンデマンド配信)
大会長:河合毅師(神奈川リハビリテーション病院歯科口腔外科/関内馬車道デンタルオフィス)
準備委員長:塚本亮一(日本大学松戸歯学部障害者歯科学講座/プラムデンタルオフィス)
事務局長:駒井啓一(啓歯産業/新東京歯科技工士学校)
公式サイト
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