花王が「歯みがき」と「飛沫」の関係性を調査、コロナなどの感染症予防を考慮して

パーソナルヘルスケア研究所は、歯みがき時に飛び散り落下する飛沫の様子「飛沫動態」とそれに影響する歯みがき動作の関係を明らかにし、どのようなみがき方をすれば飛沫量を抑制できるのかの調査を開始した。

花王社のパーソナルヘルスケア研究所は、2021年11月3日から27日にかけてWEBで行われた「関東甲信越歯科医療管理学会 第27回学術大会」で「歯みがき時に口から飛び散り落下する飛沫の様子と歯みがき行動の関係についての研究結果」を発表した。歯みがき動作の違いによって飛沫量などの差があることや、効果的な歯みがき方法を明らかにした上で、飛沫を抑えるために気をつけることについて提案している。

歯みがきは、口腔内を清潔に保つために重要である一方、歯みがき時に発生する落下性飛沫について、 インフルエンザや新型コロナウイルスといった感染症の感染リスクを高める可能性が昨今指摘されている。しかし歯みがき時の飛沫と歯みがき行動について定量的に解析した例はない。そこでパーソナルヘルスケア研究所は、歯みがき時に飛び散り落下する飛沫の様子「飛沫動態」とそれに影響する歯みがき動作の関係を明らかにし、どのようなみがき方をすれば飛沫量を抑制できるのかの調査を開始した。

調査から分かった歯みがき動作と飛沫の関係性

検査では2つの試験を実施した。1つ目の「飛沫動態の解析(ヒト試験)」では成人男女20名に普段と同じように歯みがきをしてもらい、その様子を微粒子可視化装置で撮影。得られた画像から飛沫の量と飛距離の解析を行なった結果、全被験者に共通して足元から半径50cm以内の左右に45°(計90°)のエリアに飛沫が最も多く飛散していることが分かった。中には最大で足元から179cm離れたところにまで飛沫が達した被験者もいたという。

このほか飛沫量と歯みがき動作の関係性に着目して分析。みがく際に口を開けている時間が短い人や歯ブラシを動かす幅(ストローク幅)が小さい人の飛沫量は顕著に少ないことや、飛沫量が多い歯みがき動作を行なう人でも歯磨剤(ペーストタイプ)を使用することで飛沫量が減少することが分かった。

「飛沫量の定量解析(モデル試験)」では歯ブラシの動かし方と飛沫量の変化を定量的に計測するため、歯ブラシの動きを制御できる機械を用いて試験を行なった。ステンレス製の半円柱で作成した疑似歯モデル上で、歯ブラシのストローク幅(30mmまたは15mm)や速さ(180mm/sまたは120mm/s)、荷重(300gfまたは150gf)、歯磨剤有無など4つの条件を変えてブラッシングをした。その結果、ストローク幅は30mmから15mmに短くすると飛沫量は顕著に減少。さらにストローク幅30mmの場合でも歯磨剤を使用することによって飛沫量が顕著に少なくなった。なお、ストロークの速さと荷重は飛沫量に影響しなかった。

2つの結果からわかったこと

歯みがき時の飛沫は歯と歯の凹凸を往復する際に、歯ブラシの毛先が唾液などとともに跳ね上がることによって発生すると考えられることや今回の結果から、パーソナルヘルスケア研究所は「ストローク幅を小さくすることで毛先が跳ね上がる前に次の往復運動が起こり、毛先の跳ね上がりが起こりにくくなって飛沫量が抑えられた」と推察。また、歯磨剤を使用した場合「口中で歯磨剤が泡立つことによって唾液などの液粘度が増加して飛沫が飛びにくくなった」と考察している。

以上の結果から、歯みがきにおける飛沫を抑制するために気をつけることを解析。「歯磨剤を適量使う」「口を閉じてみがく」「歯ブラシを小刻みに動かして歯を1本ずつみがくようにする」「複数人で歯みがきをする場合は、2m程度間隔をあける」「歯みがき後は、周囲を衛生的に保つために消毒剤などを用いて清拭する」といった内容を提案した。

■花王:公式サイト

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